ビバラックレポート03
特別養護老人ホーム太陽の國 様

太陽の國です!

施設長 福村裕子

施設長 福村裕子

太陽の國周辺の環境は非常に豊かで「春のお散歩」「夏の野外庭園」「秋の散歩道」「冬のサンルーム」と四季をテーマにした環境があり、入居者が積極的に「土」「緑」をテーマにした環境下で、希望に満ちた生活を営めるように、配慮されています。健康に関しては、医療面では医師、看護師によるケアはもとより、歯科医師と共に口腔健康回復、疾病の予防の為の口腔ケアに取り組んでいます。これにより食事を味わって楽しい生活が保てる環境を提供しております。
また、広い地域の人々の協力による音楽を中心とする多彩な文化活動を通しての、精神生活高揚を極めて重要なテーマとしています。そのため、音楽の活動に必要な構造および設備に関しても十分に考慮されています。

ご利用者様の生活に関しては、家族会(家族とケアスタッフとの対話)を通して、個々人への適切なケアプランのもと、身体的にも精神的にも、安全、安定した生活が営める様、スタッフ一丸となって努力しています。

施設概要

名称・所在地
名称 特別養護老人ホーム太陽の國
住所 〒245-0051
横浜市戸塚区名瀬町1566番
電話番号 045-812-8435
ファックス番号 045-812-8437
交通 JR 横須賀線 東戸塚下車 バス妙法寺徒歩10分
施設の類型 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
敷地面接 6512.34m2
建物規模 延床面積 5289.0m2 鉄筋コンクリート3階
ベット数 150(本入所 130 短期 20)
事業主体
事業主体 社会福祉法人 朋光会
所在地 横浜市戸塚区名瀬町1566番
代表者 理事長 福村 正
設立年月日 1987/5/1
経営方針・目標
利用者が安定した介護を受け入れられ安心してすごせる場であること。地域の方々へも開放し、希望に満ちた生活の場であること。
職員体制
一般の高齢者の介護、痴呆高齢者に音楽療法による介護
  施設長 事務員 生活相談員 介護職員 看護職員 栄養士 調理員 機能訓練員
常勤 1 3 3 52 4 3 4 1 2
非常勤       13 4   12   18
入居者とケア職員の比 3対1
夜勤体制(夜勤者数) 7名
有資格者
介護福祉士、 社会福祉士、ケアマネージャー
29人(複合資格保有者は含まず)
職員の平均年齢 35.2歳
ボランティアの関わり方 16グループが音楽療法・シーツ交換・喫茶・行事参加
入居者状況
要介護度別人数
5 4 3 2 1 要支援
人数 48 38 28 13 3 0

とある1日の流れの中での介護状況

時間 介護内容
05:00 オムツ交換
06:00 起床・洗面介助
07:00  食事介助
08:00  
09:00 水分補給
10:00 入浴(水曜・土曜)※その他 オムツ交換
11:00 離床
12:00 昼食介助→口腔ケア介助
13:00 お昼寝
14:00 クラブ・レクリエーション・行事等
15:00 おやつ
16:00 オムツ交換
17:00  
18:00 夕食介助→口腔ケア介助
19:00  
20:00 水分補給
21:00 オムツ交換・消灯
22:00  
23:00  
00:00  

ビバラックを使った口腔ケア

きっかけは・・・
当初、太陽の國のご利用者様の方で、ご家族が熱心に毎日いらっしゃる方がいて、その方に使って頂こうと導入したのが最初ではなかったかと思います。

ビバラック導入前
当初、太陽の國のご利用者様の方で、ご家族が熱心に毎日いらっしゃる方がいて、その方に使って頂こうと導入したのが最初ではなかったかと思います。

ビバラック導入前と導入後を比べて・・・

時間 機器を使用すると時間がかかってしまうと思われがちですが、ビバラックは歯ブラシの先端部の交換のみで使用できるので準備に手間がかからない分、ビバラック導入前のケアとほぼ同じ時間内でより丁寧に簡単に口腔ケアの提供が出来ています。
口腔内の変化 当施設往診Drより、ミュータンス菌(むし歯菌)が減少しているとのこと。また見た目にも通常のブラッシングよりキレイに磨けています。
口臭の有無 口臭に関しては3名とも変化がないようです。(元々口臭は感じませんでした。)
対象者の変化 現在の使用者3名とも導入直後よりは拒絶が少なくなり、
口も大きく開けてくれるようになってきました。慣れてきたのでしょうか?

菅先生にお聞きしました!!

菅 武雄先生
鶴見大学歯学部
高齢者歯科学講座
菅 武雄先生

太陽の國においてビバラックを導入する前はどのような口腔ケアを指導されていましたか?
「口腔ケアの自立度に応じて介入レベルを設定し、ケアを組み立てる」という考 えが当時は不十分でした。障害者施設での経験から、自立支援の重要さは理解してい ましたが、中途障害に対する経験が浅く、老人ホームでの高度介入の難しさを思い知 らされました。スタッフの協力を得ることができるまでは、足手まといにすらなって いました。連携のきっかけになったのはスポンジブラシだったと記憶しています。

太陽の國においてビバラックを使用するようになってからの変化がありましたか?
一番の収穫は、どんなADLの要介護者であっても、口腔ケアは安全に確実に行えることが証明でき、スタッフへの指導もより具体的になった事です。施設からの学会・研究会発表もこんなに積極的に行うとは思っていませんでしたし、時代の変化もあり、スタッフも『科学的なケア』を考えるようになったのは、ビバラックを初めとした新しい機器によるものだと考えています。

歯みがきチェック表!

歯みがきチェック表!

このように歯みがきを行った際の反応やちょっとした表情、感じた点等を細かく記入しています。
太陽の國では情報共有を行う事で、どのケアスタッフもご利用者様の状態にあったケアを提供することによって、円滑に口腔ケアを行うことができます。
また、問題があった際は菅先生からの指導により次の改善に取組んでいます。

この人に注目

氏名 野村 茂和さん 野村 茂和さん
笑顔の優しい
野村さんは施設の
人気モノ!!
役割 ケアワーカー
前職 大学では経済法学を専攻し企業の法務や経済法関連の法律家になりたいと思っていました。今の仕事は全く違いますが最近はリスクマネジメントの分野で以前勉強したことが役立つ事もあります。
就職の動機 ”人の役に立てる仕事”をと思い、初めはホームヘルパーを目指していましたが、男性の正社員の募集は少ないため職業訓練校を通じ今の勤務先に就職しました。昨今施設における集団生活にあっても、利用者一人一人の個性に応じたきめ細かなサービスが求められており、その点では施設のケアワーカーもホームヘルパーも変わらないと感じております。

INTERVIEW

ビバラックの良い点は?

1.うがいができない、認識できない方でもヌメリや食べかすなどを取り除く事が出来る。
2.舌苔をきれいにする事ができる。
3.構造が単純でメンテナンスが楽。

ビバラックへの今後の希望は?

限られた場所にも設置できるように小型化を望む。

口腔ケアを行う際に心掛けていることは?


ビバラックは
使いやすい位置に!

夜間の誤嚥防止や口腔内清潔保持のため日中に比べ夕食後の口腔ケアは念を入れるよう心がけています。
(なかには口腔ケアを拒否される方もいらっしゃいますが、多少強引に行い、清潔を保っています。)
なお、うがいは殺菌効果のある”お茶”を使用しています。

他のケアと比較して口腔ケアの難しい点、工夫をしている点は?

他のケアに比べデリケートなお口のケアは一旦拒絶されるとお手上げになってしまいますが、最低限のケアとしてお茶を飲んで頂いています。

ビバラック利用者の声 ケアワーカー 野村茂和

ビバラックは、ご自身でうがいの出来ない方の口腔ケアに大変有効だと思います。私達の施設では試験的に2人のご利用者様に使用していましたが、対象を6人に増やしました。経管栄養のご利用者様にも利用できるのではないかと思います。当施設に往診に来て下さる歯科医師もその効果を絶賛されています。歯ブラシの部分の交換のみで多数の方が使用出来るのでさらにビバラックの使用者を増やしていきたいと思います。

要介護者に対する介入レベル別口腔ケア


中谷敏恭先生

中谷敏恭先生

横浜市旭区 中谷歯科医院 院長
鶴見大学歯学部 高齢者歯科学講座 非常勤講師


施設における歯科医師・歯科衛生士の役割を考えると、第一に歯科診療、そして第二に口腔ケアであると考えています。そして、近年特に注目を集めているのが口腔ケアです。
口腔ケアは、漫然と口の中の汚れを拭き取る、という時代から、口腔ケアの自立度を判定して介入レベルを決定し、利用者個人別の口腔ケアプランを立案し実行するという時代になりました(※1)。

介入レベルは、軽度、中等度、高度の3段階に暫定的に分類していますが、ここでは高度介入による口腔ケアを取り上げます。口腔ケアに関して全介助が必要で、誤嚥(ムセ)、気管切開、経管栄養、意識障害などの条件が加わった要介護者に対する口腔ケアは、現場でも苦労の絶えない問題でした。特に誤嚥を有する場合には「禁水」とされ、十分なケアが出来なかったのです。口腔内は乾燥状態であり、剥離上皮の滞積(※1)(※2)が見られる場合も多く、ケアは困難を極めます。(余談ですが舌や口蓋に滞積する剥離上皮は、以前はその実態が不明でした。痰が乾燥したもの、プラークの乾燥したもの、などと諸説ありましたが、病理組織診断により剥離上皮であることをわれわれは確認しました)。このような口腔乾燥状態は口腔機能が極度に低下、もしくは停止していることからくる状態です。必要なケアは舌や粘膜にはスポンジブラシを用いたケアが適しており、残存歯に対しては給水・吸引ブラシ(※3)を用いたケアが安全で確実なケアに必要です。

さらには給水・吸引ブラシによる口腔ケアの効果は、細菌数の減少のみならず、ケアへの抵抗を減少させることも判り(※4) 、さらに最近では、口腔湿潤剤を用いた口腔ケア(※5)もその手法の開発が可能になってきました。

介助による口腔ケアが必要な要介護者は今後も増加すると予測されています。高齢者の増加とともに在宅医療・在宅介護の拡大は必須であり、施設介護と同時に在宅介護における口腔ケアの質の向上には、まだまだ知識と技術が不足しています。今後とも実践と研究を継続したいと考えています。

【参考文献】

※1 菅 武雄:口腔ケアハンドブック, 日本医療企画, 2002.
※2 飯田良平、菅 武雄他、高齢者介護の現場での口腔ケア、老年歯学 16(2):152-155(2001).
※3 中谷敏恭、菅 武雄他:給水・吸引ブラシ「ビバラック?」の特徴, 老年歯学 16(3):379-382(2002).
※4 中谷敏恭ほか:全介助による口腔ケア機器の適正使用のガイドライン作成, フランスベッド・メディカルホームケア研究助成報告書, 2003.
※5 菅 武雄, 中谷敏恭ほか:湿潤剤を応用した要介護者の口腔ケア ―ケアの前提条件としての保湿の効果―, 老年歯学(19(1), 2004)

最後に

『質の高い口腔ケアをめざして・・・』

ビバラックレポート第三号は、横浜市戸塚区にある『介護老人福祉施設 太陽の國』を訪問いたしました。
入口を入ったとたん、とても美しい歌声が耳に優しく入ってきました。
太陽の國では、毎週木曜日に、3階まで吹き抜けになっている食堂兼多目的ホールでボランティアの合唱団の方々が音楽を媒体に施設の方々と交流を行なっています。
2階3階からご利用者様が顔を出し、一緒に口ずさまれて和やかな雰囲気でした。
この音楽活動は、施設内だけでなくイタリア、オーストリア等の海外の国々と国際交流会が行われるほど本格的に活動されています。

このような、心に響く歌声が聞こえる太陽の國で、ビバラックは対象者を重度の方に絞り、ベッドサイドに設置し、食後の口腔ケアに利用されています。
口腔ケア終了後は、介助者がご利用者様のその日の様子を記録し、週に1度訪問する歯科の先生に書面で報告を行い、口腔ケアについてのコミュニケーションを取るようにしています。

時間に追われる介護の中でも太陽の國は、歯科医師のアドバイスをうけながら、状態の異なるご利用者様への口腔ケアを、使用道具などを変えることにより、その方に適した口腔ケアを実施しています。
ビバラックもその中で口腔ケアのひとつの道具として、しっかり組み込まれ活躍しています。
ビバラックを取り入れることによって、口腔ケア全体の時間は変わらないけれども、準備の時間が省けてケアを提供する時間が増えたとの声をいただきました。
ビバラックに限らず、市販されている様々な道具を上手く利用し、その方に合った質の高い口腔ケアを目指していただければと思います。

鞄結梛Z研 歯科衛生士 中山かな子

口腔ケアに関する様々なご意見を募集しています!

「こんなケアしています!」

ビバラックに限らず、ご自身で現在行っている口腔ケアの方法を教えてください。

「ビバラックを活用しています!」

現在ビバラックをご使用の方でどんな使い方をされているのか教えて下さい。
例) 施設の中で1台を数人で使用しています!

「ビバラックのここがだめ!」

ビバラックを使用している方、または何処かでご覧になった方でビバラックの改善点などをお聞かせください。

「こんな口腔ケア用品が欲しい」

ふだんの口腔ケアをしていてこんな道具があったら!と言うような意見を聞かせてください。

ご意見はTG@tokyogiken.comにてお受けいたします。
皆様のご意見、心よりお待ちしております。