口腔ケアの実践
保湿からはじまる口腔ケア
保湿からはじまる口腔ケアは、高度介入による口腔ケアを効率的に効果的に、さらには安全に提供できる湿潤剤を用いた口腔ケア手法です。その手法は、「常時の保湿」を口腔ケアの前提条件と位置付け、残存歯のケアと粘膜のケアを両立させるものです。
全介助における口腔ケアは、意識障害を伴ったり、含嗽(うがい)が不可能で、ムセが強いなど口腔内で、水が使えないなどの条件を有する場合があり、口腔ケアの実施が難しく、導入が遅れているといえます。
全介助の口腔ケアの対象者は、経口摂取をしていない場合などが多く、口腔機能が著しく低下していることも少なくありません。口腔機能低下の症状として口腔乾燥が挙げられます。
口の中は、本来常時湿っている場所で、もっといえば湿っていなければいけない場所です。粘膜も舌も乾燥に弱く、様々な症状を引き起こします。
1.常時の保湿
高度介入による口腔ケアの基本は、常時の保湿です。
常時の保湿により、粘膜や舌の保護が行なえ、また口腔機能低下した剥離上皮の堆積、乾燥した痰などの汚れの沈着、口臭を防ぐことができます。
2.残存歯のケア
ブラッシングに湿潤剤を用いることで、口腔ケア時の水や湿潤剤の誤嚥を防ぐことを期待できます。
歯の汚れ(プラーク)は、スポンジブラシやガーゼでの清拭だけでは不十分なので、残存歯がある方はブラッシングが必要になります。
誤嚥の危険が高く、口腔内で水が使用できない場合は、注水・吸引歯ブラシ(ビバラックプラス)を利用する方法があります。
注水・吸引歯ブラシ(ビバラックプラス)を利用することで、ケア時間の大幅な時間短縮が可能になり、安全かつ効率的に口腔ケアが行えます。
3.粘膜のケア
口腔乾燥を有する場合の全介助による口腔ケアは、非常に手間と時間を要し、また乾燥状態の剥離上皮の除去は出血や疼痛を伴う場合がありますが、口腔ケアに湿潤剤を用いることで、問題を解消することが出来ます。
常時の保湿と組み合わされることで、効率よく、効果的に口腔ケアを行うことができ、粘膜のケアの目的である、清掃(剥離上皮や食物残さの除去)と「刺激」(マッサージ)を確実に実施できるようになります。ここで効果的で有効な道具は、スポンジブラシです。
スポンジブラシは、柄がプラスチックで折れにくく弾力があるもの、スポンジ部分は柔らかすぎず、柄から外れにくいものを選びます。
使用方法は、基本的にはスポンジの側面を使用しますが、落としにくい乾燥した汚れは、スポンジのエッジ(角部分)を使用します。