口腔ケアの実践

口腔ケアの組み立て方


口腔ケアの手法の一例として、「介入レベル別口腔ケア」をご紹介いたします。
これは、対象者の口腔ケア自立度に応じた分類で、介入の程度を3つのグループにわけて考える方法です。

介入レベル 状態 使用する用具・工夫
軽度 ほぼ自立 補助的清掃用具の指導、既存用具の改造・指導、声がけ
中等度 部分介助 仕上げ磨き(確認)、介助用ブラシの使用、
技師の管理・保管
高度 全介助 スポンジブラシ、注水・吸引ブラシ、口腔湿潤剤

1.軽度介入による口腔ケア

口腔ケアの自立度が比較的高い状態の方への口腔ケア

口腔ケアの自立度が比較的高く、セルフケアは一部可能な場合には、口腔ケア介入は最小限に抑えます。通常の歯ブラシで不十分な場合は、歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助的清掃用具を使用します。

軽度介入の場合は、自立支援の要素が強く、「口腔衛生」(新しい口腔ケアの考え方参照)に対するアプローチが主体であり、また「口腔衛生」をサポートする「口腔環境」(新しい口腔ケアの考え方参照)も介入のポイントです。

2.中等度介入による口腔ケア

口腔ケアの自立度が1.より低下した方への口腔ケア

要介護者本人による清掃状態を確認し、不十分な部分があれば、仕上げのブラッシング(介助による清掃)を行ないます。

用具としてセルフケア用具をそのまま使用する場合と、介助用の歯ブラシを使用する場合があります。

3.高度介入による口腔ケア

口腔ケアに全介助のケアが必要な方への口腔ケア

高度介入による口腔ケアが必要な対象者の多くは意識障害を伴い、口腔機能が極めて低下しています。口腔機能の低下は、誤嚥性肺炎の危険も高まりますので、口腔ケアが最も必要な分野になります。
しかし、誤嚥の危険のある方は口腔ケア時の水分も危険が伴い、実施が非常に困難です。

そのような全介助による口腔ケアは、「口腔衛生」「口腔機能」「口腔環境」すべてに積極的な介入が必要となります。口腔機能が極めて低下している状態なので、まず「口腔環境」の改善を行い、その上で「口腔衛生」「口腔機能」に対し、アプローチしていきます。

「口腔環境」は、口腔乾燥の有無を確認し、乾燥がある場合は保湿を行い、維持することに取り込みます。口腔乾燥状態の方は、唾液流出量の低下・開口状態の持続など口腔環境が悪化している場合に起ります。

次に「口腔衛生」「口腔機能」ですが、介助用の用具や器具も必要になります。スポンジブラシは、全介助による口腔ケアに非常に有効です。残存歯がある場合には、ブラッシングを行ないます。歯ブラシはプラーク(細菌)を物理的に破壊する役目があります。 またケア時の体位制御(可能な限り誤嚥しにくい姿勢)にも対応する必要があります。 高度介入による口腔ケアのチェックポイントを、次の項(高度介入による口腔ケアを実践する前に)でご説明いたします。