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REPORT
No.5
社会福祉法人 和枝福祉会
若草
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施設長
勝野 健治
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若草は重度重複障害者の通所施設です。通所されるご利用者は医療的ケアを必要とする方々が多く日常生活は健康管理を中心に施設内、外において様々な活動が行われます。ご利用者の皆さんの健康維持が重要となる中で、その取り組みとして口腔ケアが挙げられます。口腔ケアは虫歯の予防だけでなく、誤嚥性肺炎の予防になります。
見えにくい部分なので、口腔内を清潔に保つ事は重要なことだと思います。
施設は開所当初から神奈川区歯科医師会さんにご協力をいただき、歯科医師・歯科衛生士の方々による定期的な利用者の口腔ケアに力を入れることができました。
今後は歯科医師会、家庭、若草の連携を深め、また口腔内ケアにとどまらず他の分野における地域との連携も進めていきたいと思います。
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『高齢者のスタッフと障害者のスタッフ合同の勉強会などスタッフどうしの交流があるのでいい刺激がもらえる。』と、高齢者施設と障害者施設が同居している若草のメリットをお話しする勝野施設長。
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■施設概要 |
施設名 |
社会福祉法人 和枝福祉会 若草 |
所在地
TEL・FAX・フリーダイヤル
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神奈川県横浜市神奈川区反町1-7-5
TEL045-320-3231 FAX045-320-6330 フリーダイヤル0120-093-294 |
交通 |
JR東神奈川駅 徒歩8分 東横線 反町駅 徒歩5分 |
施設の類型 |
知的障害者通所更生施設(2階)
併設高齢者ショートステイセンター(3,4階)
診療所(2階) |
施設長 |
勝野 健治 |
敷地面積 |
1、5511,31u |
建物規模 |
鉄筋コンクリート 5階建 |
室総数 |
知的障害者更生施設 4室
(併設高齢者ショートステイセンター 29室) |
定員 |
知的障害者通所更生施設 支援員40名
(併設高齢者ショートステイセンター50名) |
現在の利用者数 |
知的障害者通所更生施設 支援員40名
(併設高齢者ショートステイ ショートステイの利用者状況は日々異なります) |
スタッフの内訳
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施設長
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看護師
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栄養士
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常勤 |
1人
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17人
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4人
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1人
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非常勤 |
0人
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0人
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0人
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0人
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通所利用者ケアと職員の比
通所利用者ケアと職員の比 |
3対1 |
有資格者数 |
17人 |
職員の平均年齢 |
25歳 |
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通所利用者の状況
身体障害者手帳 |
1級
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2級
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3級
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4級
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人数 |
36人
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9人
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0人
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0人
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■事業主体 |
事業主体名 |
社会福祉法人 和枝福祉会 |
所在地 |
神奈川県横浜市緑区北八朔1777-6 |
代表者 |
丹野 貞子 |
設立年月日 |
昭和63年 4月1日 |
■施設方針・目標 |
私たちは誰もが生涯を通じ、人として尊重され自分らしく豊かに生きたいと願っています。若草という環境と体験の場所を提供し、仲間と一緒に過ごす喜びや楽しみを共有でき一人ひとりが豊かに生活できるように支援します。 |
■主な介護 |
知的障害者通所更生施設「若草」では重度重複障害の方々が多く通所されています。ご利用者は、移動、食事、トイレの場面など日常生活における様々な場面において介助が必要とされます。日常をより良い生活にする為に私たちはお手伝いをしています。 |
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伊藤主任
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私どもの施設は開所当初から横浜市神奈川区歯科医師会の歯科医師、衛生士さんのご協力により施設のご利用者への口腔ケア態勢を整えることができました。
ビバラックはこの歯科医師会からの薦めにより知りました。
使用することでご利用者の口腔ケアが行いやすく、またご利用者の口腔内に変化が感じられたことが購入のきっかけとなりました。
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ビバラック導入当初は、まだ日常生活の中にご利用者への口腔ケアの時間を設けることすら困難でした。理由としては、昼食後の時間はご利用者への活動時間に多く使いたい、口腔ケアへの必要性の意識の薄さ、また慣れないビバラックの準備に手間がかかるなどがありました。しかし、歯科医師会が研修や技術的支援をしてくださったこと、また現場職員がご利用者への口腔ケアの必要性を感じてきたこと、技術の向上などから口腔ケアの時間を設けられるようになりました。この現状に至るには、歯科医師会による専門職からの積極的な投げかけの力が大きかったと感じます。保護者へは施設の口腔ケアの現状を報告していますが伝えていくものがまだ不足していると感じています。
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施設には、家庭では充分な口腔ケアが行えていないと思われるご利用者が多くいます。一日に一回でも施設でしっかりとした口腔ケアが行えるようになったことが大きな変化です。現場職員からはご利用者の口臭が弱くなった、舌苔の付着が少なくなったなどの報告が聞かれます。
今後は、保護者の方々にも口腔ケアの必要性をお伝えしていきたいと思います。
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DATA
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氏名 |
大川 浩司(26歳) |

大川さん写真
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職種 |
生活支援員 |
職歴 |
5年 |
前職 |
なし |
介護職を選んだきっかけ |
将来性が有望だと思い、介護職を選択。
最初は老人の介護を考えたが、知的障害者施設での実習の際に、障害者の素直な一面に触れ、もっと追求してみたいと思い、障害者介護の道に進んだ。 |
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平成11年度より神奈川区歯科医師会公衆衛生委員会の中に在宅歯科部会というものを発足させました。これは、急速に高齢化が進んでいく社会的ニーズに合わせ、お身体が不自由になられ歯科医院に来院できなくなった患者さんに対し、主治医としてなんとかしてあげたいという歯科医師会会員を支援するのが発足の目的でした。そのために、救急蘇生法や訪問診療の講習会、また、ポータブルユニット・ポータブルレントゲンの購入など知識と機材の充実を図って着ました。もちろん、主治医を持たない患者さんに対しても、地域に根ざした歯科医師会として対応しなければなりません。ただ、歯科医師会が訪問診療を行う姿勢があっても地域の人たちに周知してもらわなければ、依頼はありませんでした。区役所と連携を持ち、町内会の掲示板に区役所の予算で作ってもらったポスターを貼ったり、ヘルパーさん対象に講演会を行ったり、地域の方々対象に地域ケアプラザで講習会を開催したりしてきました。
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湯田先生 |
「若草」は、在宅歯科部会発足と同時期に横浜市神奈川区反町に高齢者ショートスティセンターと重度重複障害者通所施設としてオープンしました。そのときの歯科医師会の担当理事であったことにより、私と「若草」のかかわりが始まったのです。
歯科医師会が、主にかかわっているのは障害者施設のほうです。初めて訪れたときの驚きは、今も忘れることができません。自傷で失明したり、おでこに大きなたんこぶを作ったりしている方。床をのた打ち回って奇声を上げる方。身動き一つできない方たちに、どうやってかかわりを持てばいいのか。私たちと同じ生を受けた人たちかと正直愕然としました。( 基本的に通われている方たちは、養護学校以上の年齢の方。18歳から上の年齢の方たちです。)
口の中に歯ブラシを入れることができるかどうかより、どうかかわるかが大きな問題でした。まず、私たちが職員の人たちに溶け込み、私たちの心の中に障害者の人たちを受け入れる努力からはじめました。障害者の方に歯科治療の必要ができたとき、全身麻酔や入院が余儀なくされます。私たちの、「治療にならないようにしよう。そのためには、口腔ケアが大事なんだ。」という思いが、職員や父母会の皆さんに理解されたときから、「若草」における口腔ケアが始まったように思います。あるとき、障害者のお母さんから「先生、奥歯に虫歯ができたみたいなんですが、治療が必要かどうか見てもらえませんか。」という依頼で診察すると、確かに要治療の虫歯を発見しました。その旨を伝えると、お母さんは「○○ちゃん、ごめんね。ごめんね。」と泣き出してしまいました。私は、言葉を失ってしまいました。お母さんの愛情とともに、真剣さの度合いを強く感じた経験でした。
「若草」の口腔ケアの大事なアイテムのひとつにビバラックがあります。歯科医師会が、訪問診療の機材の充実を図ったときに購入したもので、歯科医師会の会員が使用しないときという前提で、「若草」とのかかわりを持った当初より口腔ケアに導入しました。うがいを行えない障害者のブラッシング時に、無くてはならないものでした。食後の口腔ケアの時間は、完全に定着し現在もビバラックは、毎日稼動しています。障害者の口腔内を皆さんに見ていただきたい気持ちです。長くかかわってきて気がついたことは、口腔内がきれいで口臭が無いことはもちろんなのですが、食事の時間が短くなり障害者の皆さんが穏やかになってきたように思います。ブラッシングによる口腔内への刺激とブラッシング時間のスキンシップが、功を奏したかとも考えます。
生涯、かかわる機会の無いまま過ごしたかも知れない歯科医療人生の中で、得がたい経験をさせてもらっている「若草」に感謝しています。
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■Another Hero■
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若草での口腔ケアがここまで浸透したのも、田中さんをはじめとする歯科衛生士の方々の協力があったからとのこと |
■ステップ1
ご利用者の方の口腔内のブラッシングを、歯科衛生士が毎回ビバラックを用い、スタッフの方に説明・指導を行う。
■ステップ2
徐々にスタッフの方も歯ブラシ・ビバラックを用い口腔ケアを行う。
■ステップ3
並行して、スタッフの方の教育を実施。
(自分の口腔内のブラッシングや、神奈川歯科大学・宮城教授の講演等) |
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←
『初めは大変でしたが、今ではブラッシングもうまくできるようになった事と吸引しながら注水が行えるので誤嚥が少なくなりました。』と、歯科衛生士の田中さん
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→
週に一度の訪問が
終った後のくつろぎの一枚。
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宮澤さんをはじめとする専門の栄養士の方が知恵と工夫をこらした愛情たっぷりの食事は若草の自慢です!
栄養や食べやすさはもちろんの事、『見た目』には特にこだわって作っています!
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ホワイトシチューで、ルーと野菜を加工した後に、別に加工した肉団子を
のせています。
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鮭の山椒焼きです。
付け合せにブロッコリーをつけています。
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『質の高い口腔ケアをめざして・・・』
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今回のビバラックレポートは、新しく入社しました小野弘美がお届けいたします。
ビバラックレポート第5号は、「社会福祉法人 和枝福祉会 若草」の2階にある知的障害者通所更生施設を訪問しました。
若草の施設内は、ご利用者様の紹介、行事ごとの手作りのポスターや、スタッフの方々の大きな声や、笑い声など、明るくアットホームな雰囲気に包まれています。
そのような若草では、ご利用者様が楽しく過ごせるように次のことにも工夫がされています。
一つ目にお食事。専門の栄養士さんが、見ても楽しく、食べても美味しくなるように食材のひとつひとつの形や味を工夫されています。
二つ目に歯みがき。誤嚥の危険のある方に対しては、ビバラックの歯ブラシを利用し、お水を出してもむせさせずに汚れをきれいに磨き落とします。また、うがいが出来ないかたに対し、ビバラックの吸引機能を利用してお口の中にお水を流しきれいに洗い流します。
このように、ビバラックを有効に使用し、短時間で口腔ケアを終わらせることによって、ご利用者様に負担のない口腔ケアが施され、口腔内の環境はよい状態で保たれています。
若草のご利用者様は摂食嚥下障害のある方もいらっしゃいますが、ビバラックを使用した質の高い口腔ケアによって、口腔内が改善され、おいしく食事をしていただくことにつながっているようです。
摂食嚥下障害のある方にもビバラックなどの道具をうまく利用して安全に楽に質の高い口腔ケアをしていただければと思います。
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ビバ美のワンポイント講座
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今回は文中で使われた言葉の解説をいたします。 |
◎重度重複障害者施設) |
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重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複していて、常時医学的管理のもとに療養する必要のある者を入所(通所)させ、医学的治療と日常生活の指導を行う施設。 |
◎誤嚥性肺炎 |
誤嚥に引き続いて発症する肺炎。不顕性誤嚥という口腔内分泌物や胃液が少量ずつ肺内へ吸引される誤嚥もあります。この不顕性誤嚥にあわせて細菌が吸引され、肺炎が引き起こされます。 |
◎知的障害者更正施設 |
18歳以上の知的障害者を入所(通所)させ、保護するとともに、その更正に必要な指導および訓練を行う施設。 |
◎高齢者ショートステイ |
在宅で介護している家族が疾病などの事情により介護が困難になったり、休養を必要とする場合に、一定期間入所する施設。1人暮らしの要介護者が一時的に入所することも出来る。 |
◎生活指導員 |
利用者の健康管理(食事・衣類の着脱・排泄など)の基本的な生活習慣を身に付けることを援助する。各種行事の企画・実行、また保護者や関係機関との日常的な連携も大事な仕事である。 |
◎心身障害者手帳 |
上肢・下肢・体幹・目・耳・言語・心臓・呼吸器・膀胱・直腸・小腸・じん臓及び免疫機能に障害があるため、日常生活に制限を受けている方に交付される。 |
◎経管栄養 |
管(チューブ)から、流動性の栄養物(流動食)を注入し、栄養摂取すること。消化・吸収能力はあっても、口から摂取することが困難な場合などに行われる。 |
◎摂食嚥下障害 |
飲食物の咀嚼や飲み込みが困難になる障害のこと。 |
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